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ASOにおける血管内治療の適応

ASOの腸骨動脈病変、大腿膝窩動脈病変に対する治療法として、まず外科的血管再建術が、 その後に血管内治療(PTA、ステント留置)が広まった。血管内治療は外科的血管再建術に比べて侵襲は少ないものの、 両者の適応、成績に関しての明確なエビデンスは存在しなかった。 そのため、TransAtlantic Inter-Society Consensus(TASC)では、末梢動脈疾患を間欠性跛行 (Intermittent Claudication;IC)と重傷下肢虚血(Clitical Limb Ischemia;CLI)との、それぞれの症状について、 診断方法、予後、治療法方法が分類され、それぞれについての治療の指針や臨床研究の指針が示された。 ここでは、IC、CLIそれぞれについての血管内治療についてまとめた。

間欠性跛行(IC)

ICのある患者はICのないASOの患者に比べて粥状動脈硬化症による死亡リスクが2-4倍と高く、 喫煙などのリスクファクタを減らすことがまず望まれる。血管内治療や手術は、 運動療法の失敗した患者に対して行う。手術と血管内治療とのどちらを選ぶべきかについて以下のような分類をもとにした勧告がある。 腸骨動脈の病変は、Type AからType Dの4つに分類されている。

Type A
1.片側または両側の、CIAまたはEIAの、3 cm以下の単一の狭窄
Type B
2.CFAに及ばない、長さ3 10 cmの単一の狭窄 3.合計の長さが5 cm/2つ以下のCFAに及ばないCIAかEIAの病変 4.片側のCIAの閉塞
Type C
5.両側でCFAに及ばないCIAまたはEIAの長さ5-10 cmの狭窄 6.CFAに及ばない片側のEIAの閉塞 7.CFAにまで及ぶEIAの狭窄 8.両側のCIAの閉塞
Type D
9.瀰慢性複数個片側のCIA・EIA・CFAの狭窄(通常10 cm以上) 10.CIA・EIAの両方に至る片側の閉塞 11.両側のEIAの閉塞 12.大動脈と両側の腸骨動脈の瀰慢性の病変 13.AAAのある腸骨動脈の狭窄、大動脈または腸骨動脈の外科的手術の必要な腸骨動脈の狭窄

Type A病変では、血管内治療、Type D病変では外科的手術がよいとされている。 Type BとType Cとでは、通常血管内手術が施行されているが、エビデンスは不足している。 大腿膝窩動脈の病変も以下のType AからType Dに分類されている。

Type A
1.片側または両側のCIAまたはEIAの3 cm以下の狭窄
Type B
2.遠位の膝窩動脈に至らない長さ3-10 cmの単一の狭窄 3.石灰化の進んだ長さ3 cmまでの狭窄 4.それぞれが3 cm以下の複数の狭窄または閉塞病変 5.遠位のバイパス手術のための血流の改善が脛骨で恒常的に認められない単一または複数の病変
Type C
6.5 cm以上の単一の狭窄または閉塞 7.石灰化に関係なくそれぞれが3-5 cmの複数の狭窄または閉塞
Type D
8.CFAまたは浅大腿動脈の閉塞、膝窩と中央3分岐部の完全閉塞

Type Aには血管内治療を、Type Dには外科手術が推奨されている。Type BとType Cに関しては、エビデンスが不足している。 以上から、腸骨動脈の病変、大腿膝窩動脈の病変ともに、総腸骨動脈または外腸骨動脈の、片側または両側にある、 3cm以下の単一の狭窄(Type A)は、血管内治療の適用となる。また、腸骨動脈の病変のType B(総大腿動脈に至らない、 3-10cmの単一の狭窄;総大腿動脈に至らない、2つで総長5cm以下の狭窄;片側の総腸骨動脈の閉鎖)、 大腿膝窩動脈の病変のType B(遠位の膝窩動脈を巻き込まない3-10cmの単一の狭窄;石灰化のはげしい3cmまでの狭窄; それぞれが3cm以下の複数の狭窄または閉塞;遠位の外科バイパスの流入改善のための脛骨での恒常的な血流がない、 単一または複数の病変)についても血管内治療が多くの場合行なわれているが、これらについてはさらなるエビデンスが 必要とされており、技術の進歩によって、腸骨動脈の病変に関しては、Type Cについても血管内治療の適用となってきている。 成績に関して、2000年にTASCのガイドラインが作られた当時、腸骨動脈の病変、大腿膝窩動脈の病変ともに、 Type Aのみが、エビデンスのある、血管内治療の適用とされていたが、その後の研究によって腸骨動脈の病変に関してはデータがいくつか発表されている。 Type BとType Cに関して、Timaranら[15]の研究では、1,3,5年間の初期開存率は、血管内治療後が85%, 72%, 64%、外科的血管形成術後が89%, 86%, 86%という結果となっている。また、ステント、外科手術のどちらにおいても、 初期開存率に関与している因子は、流出血量であり、血流の乏しい症例に関しては、外科手術がステント留置に 比べて初期開存率が非常に高いという結果となっている。そして、短期的開存率はステント留置と手術療法とでほぼ同じものの、 長期的には手術療法のほうがずっと良いという結果となっている。以上から、血管内治療がエビデンス無しに頻繁に行われているが、 リスクファクターを元にした治療方法の決定をすべきと結論付けている。 Park KBら[3]の研究によれば、Type CとType Dのステント留置後の3年と5年の初期開存率は、76%と74%であり、 Type CとType Dとの病変についても血管内治療を利用してよいとしている。 以上から、バイパス手術に伴うリスクを回避するために、すべてのタイプについて血管内治療を行ってもよいが、 開存率は血管内治療の方が悪い事があり、開存率とリスクファクターとを考えた上で治療法を決めるべきといえる。 また、[3]では、両側病変について、TASCの分類で複数のサブタイプにあたる症例が数多くあり(20%)、 分類方法に限界があることが言及されている。

重症下肢虚血(CLI)

基本的にはICと同様のガイドラインに沿って治療することが示されているが、CLIのある患者は重症であることが多く、外科手術の適用となることが多い。

大動脈疾患

血管内治療は外科手術に比べてリスクは低いものの、グラフト手術に比べて開通している率は低いことが多い[1]。 ただし、疾患のレベル(IC/CLI)、狭窄か閉塞か、分岐部より前か後ろか、といった条件により開通率は変化するため、 手術と血管内治療との成績の比較は難しい。外科手術と血管内治療との両方を行うことについては、遠位再建のための血流を改善し、 長期的な開存率を上げることことを目的としてしばしば行なわれているが、それぞれの条件によって決めるべきであるとしている。

鼠径部以遠の疾患

PTAによって伏在静脈を温存し、後のバイパス手術に備えることができる。適用については、Rutherfordのgrade IからIIIまでを含めた、 臨床症状に基づいて決める。大腿膝窩動脈、脛骨腓骨動脈の治療は同時にするべきだとしている。 これも基本的にはICのガイドラインと同様である。予後に関して、症状の分類方法が難しいために比較が難しいが、 血流が最も大きな予測因子であり、2-3本の血管の血流が保たれている症例では、0-1本の症例に比べて、 2-3倍の大腿膝窩動脈の開存率があるとされている。その他には、大動脈疾患と同様に、疾患のレベル(IC/CLI)、 病変の長さ、狭窄か閉塞か、石灰化の度合、病変の形状が開存の予後を決める。大腿膝窩動脈の疾患に関して、 CLIのある患者は症状が重く、PTAの選択される割合は低い。

その他の血管内治療

血管内治療の標準であるPTA、金属ステント留置の他には、レーザによる治療、生体吸収物質ステントの留置、遺伝子治療、 血管新生療法(basic FGF[17]、HGF[18]、VEGF、bone-marrow-mononuculear cellsの移植)などが研究されている。 [11]では、 metalic stentsまたはPoly-L/D-lactide(PLA) stentsをウサギに使用した実験で、metalic stentを使用した際の、 急性血栓塞栓、感染、血管壁の穿通、免疫反応や炎症、腐食といった欠点を克服しようという研究である。これによれば、 metalic stentに比べて、生体吸収物質ステントでは、炎症が少ないが、血栓生成に関しては静止中ではstainless stentと あまり変わらず、PLA stentをヘパリンコートすることで血小板付着を防ぐことができ、コラーゲンIでも同様の効果が得られたとされている。 [10]は、CLIの標準治療の効果のなかった場合に行なわれる細胞移植による血管新生の効かない症例に関する研究であるが、 chronic hemodialysis(ASO-HD)では効かなかったがBuerger’s diseaseではCD34+とCD133+の循環量が増加して効果があったという程度で、深い考察はされていない。

参考文献

[1]Eur J Vasc Endovasc Surg:Management of peripheral arterial disease (PAD). TransAtlantic Inter-Society Consensus (TASC).2000 Jun;19 Suppl A:Si-xxviii, S1-250. [2]重松邦広 宮田哲郎:下肢閉塞性動脈硬化症の治療方針.外科,Vol.68 No.11,1271-1308 [3]Park KB, Do YS, Kim DI, et.al:The TransAtlantic InterSociety Consensus (TASC) classification system in iliac arterial stent placement: long-term patency and clinical limitations.J Vasc Interv Radiol. 2007 Feb;18(2):193-201. [4]阪口昇二:血管性病変に対するIVR.CLINICIAN,2004,534,1064-1082 [5]高山 豊他:末梢動脈閉塞に対する血管内治療施行後の外科的血行再建術例の検討.The Journal of Japanese College of Angiology,2006,46:823-827 [6]http://www.lifescience.jp/ebm/cms/cms/no.6/report/report_kicho2.htm:動脈硬化早期診断の意義 [7]http://www.lifescience.jp/ebm/cms/cms/no.3/series/series.htm:SERIES 血管内科学入門 第一回 足から全身を診る [8]末梢動脈閉塞症(PAD)患者の全身の血管イベントに対するベラプロストナトリウム(経口プロスタグランジンI2誘導体)の有効性-2つのプラセボ対照無作為化比較試験によるメタ解析-.Mebio Vol.22 No.7,115-118 [9]http://www.nv-med.com/TOSHIBA/jcs2006/pdf/Yokoi.pdf:全身血管に対するカテーテルインターベンションの最前線:血管エコーの有用性.第70回日本循環器学会総会・学術集会共催セミナー Luncheon Seminar 17 [10]Kajiguchi M, Kondo T, Izawa H, et.al:Safety and efficacy of autologous progenitor cell transplantation for therapeutic angiogenesis in patients with critical limb ischemia.Circ J. 2007 Feb;71(2):196-201. [11]Eeva-Maija Hietala:Poly-L/D-lactide stents as intravascular devices - an experimental study.2004 [12]Nonaka K, Kume N, Urata Y, et.al:Serum levels of S-glutathionylated proteins as a risk-marker for arteriosclerosis obliterans.Circ J. 2007 Jan;71(1):100-5. [13]White C.:Intermittent Claudication.N Engl J Med 2007; 356:1241-1250, Mar 22 [14]Hiatt W. R.:Drug Therapy: Medical Treatment of Peripheral Arterial Disease and Claudication.N Engl J Med 2001; 344:1608-1621, May 24 [15]Timaran CH, Prault TL, Stevens SL, et al. Iliac artery stenting versus surgical reconstruction for TASC (TransAtlantic Inter-Society Consensus) Type B and Type C iliac lesions J Vasc Surg 2003;38:272-278. [16] Scheinert D, Schroder M, Ludwig J, et al:Stent-supported recanalization of chronic iliac artery occlusions. Am J Med. 2001 Jun 15;110(9):708-15. [17] Nishikage S, Koyama H, Miyata T, Ishii S, Hamada H, Shigematsu H.In vivo electroporation enhances plasmid-based gene transfer of basic fibroblast growth factor for the treatment of ischemic limb. J Surg Res. 2004 Jul;120(1):37-46. [18]牧野寛史 森下竜一 荻原俊男. TREAT-HGF−HGF遺伝子を用いた末梢血管疾患に対する遺伝子治療の臨床研究−:THE JOURNAL of JAPANESE COLLEGE of ANGIOLOGY Vol. 45 No. 3, 137-143


Man is the only animal that blushes -- or needs to.
		-- Mark Twain

Most estimators get the scale wrong but the relative estimates right.
Everything takes longer than expected, because the estimate didnt account for
bug fixing, committee meetings, coffee breaks, and that crazy boss who
interrupts all the time. This common estimator has very consistent velocities,
but theyre below 1.0. For example, {0.6, 0.5, 0.6, 0.6, 0.5, 0.6, 0.7, 0.6}

    -- Joel Spolsky
    -- "Evidence Based Scheduling" ( http://www.joelonsoftware.com/items/2007/10/26.html )


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